相続手続きや遺産分割の場面では、法律に関する専門用語が多く登場します。これらを理解しておくことで、相続の流れや必要な手続きをスムーズに進めることができます。この記事では、相続に関する主要な専門用語を解説します。


1. 被相続人

意味:亡くなった方(故人)のことを指します。

解説:相続手続きでは、「被相続人の財産」「被相続人の意思」など、被相続人に関連する言葉が頻出します。


2. 相続人

意味:被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つ人のこと。

解説:法定相続人と呼ばれる親族が基本となります。


3. 相続財産

意味:被相続人が生前に所有していた財産。

解説:預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借入金や未払金といったマイナスの財産も含まれます。


4. 遺言書

意味:被相続人が生前に、自身の財産を誰にどのように分配するかを示した文書。

解説:公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれ作成方法や効力に違いがあります。


5. 遺留分

意味:一定の相続人に保障される最低限の相続分。

解説:遺言で財産の分配が決められていても、遺留分を侵害する内容であれば、遺留分侵害額請求を行うことができます。


6. 法定相続分

意味:民法で定められた相続財産の分配割合。

解説:配偶者や子供、親、兄弟姉妹など、相続人の関係性によって割合が変わります。


7. 遺産分割協議

意味:相続人全員が集まり、相続財産の分割方法を話し合うこと。

解説:全員の合意が必要であり、遺産分割協議書として文書にまとめることが一般的です。


8. 相続放棄

意味:相続人が相続権を放棄する手続き。

解説:相続放棄をすることで、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も受け継がなくなります。家庭裁判所での手続きが必要です。


9. 相続税

意味:相続財産に課される税金。

解説:基礎控除額を超える財産に対して課税されます。「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」が基礎控除額となります。


10. 遺産分割協議書

意味:相続人全員で話し合った結果を記載した文書。

解説:この文書を基に、金融機関での手続きや不動産の名義変更を進めることができます。


11. 特別受益

意味:生前に被相続人から贈与や援助を受けていた場合、その分を相続財産から差し引く考え方。

解説:例えば、被相続人が生前に住宅購入資金を渡していた場合、それを相続分に含めることがあります。


12. 寄与分

意味:被相続人の財産形成に特に貢献した相続人に対して加算される相続分。

解説:事業の手伝いや介護などが該当する場合があります。


13. 遺言執行者

意味:遺言書の内容を実現するために手続きを行う人。

解説:遺言執行者が選任されている場合、相続手続きは遺言執行者を通じて行う必要があります。


14. 法定相続情報一覧図

意味:相続人と被相続人の関係を図にしたもの。

解説:戸籍一式の代わりとして使用できる書類です。金融機関での口座解約や不動産の名義変更など、さまざまな手続きで利用することができます。

15. 戸籍謄本

意味:戸籍に記載されているすべての人の情報が記載された写し。

解説:被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は、相続手続きにおいて欠かせない書類です。本籍地の市町村の役場で発行可能で、家族全員の情報が含まれています。


16. 戸籍抄本

意味:戸籍に記載されている一人分の情報のみを抜粋したもの。

解説:戸籍謄本と同じく、市町村の役場で発行されます。特定の人物に関する情報だけが必要な場合に利用されます。


17. 戸籍の附表

意味:戸籍に登録されている人の住所の履歴を記載した書類。

解説:被相続人の最終住所を証明するために使用されることが多く、本籍地の市町村役場で発行できます。


18. 住民票の除票

意味:住民票が除かれた後の記録を示す書類。

解説:被相続人の最終住所を証明する際に必要となります。住所地の市町村の役場で発行できます。


19. 定額小為替

意味:郵便局で発行される、現金の代わりに利用できる支払手段。

解説:戸籍謄本などの公的書類を郵送で請求する際の手数料として利用されます。日本郵便で発行され、金額に応じた手数料が必要です。


20. 登録免許税

意味:不動産などの登記申請時に課される税金。

解説:相続による不動産の名義変更(相続登記)を行う際にも必要となります。相続登記の登録免許税の額は、固定資産税評価額の0.4%が一般的です。ただし、特例や減免措置が適用される場合もあるため、事前に確認することが重要です。

21. 戸籍の広域交付制度

意味:住民登録している市区町村以外でも戸籍謄本を取得できる制度。

解説:本籍地が遠方の場合でも、最寄りの市区町村役場で戸籍謄本を取得できます。相続手続きで戸籍を揃える際に便利です。ただし、交付可能な内容や手続きに制限がある場合があります。


22. 代襲相続

意味:本来相続するべき相続人が先に亡くなっている場合、その相続人の子や孫が代わりに相続すること。

解説:主に子供が相続人になる場合に適用されます。例えば、被相続人の子が亡くなっている場合、その子供(被相続人の孫)が相続人となります。ただし、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪までとなります。


23. 数次相続

意味:相続手続きが完了する前にさらに相続が発生すること。

解説:たとえば、被相続人が亡くなり、その後、相続人の一人が遺産分割前に亡くなると、二重の相続手続きが必要になります。数次相続は手続きが複雑になるため、早めに専門家へ相談することが推奨されます。


24. 名寄帳

意味:一人の所有する不動産を一覧で確認できる書類。

解説:市町村役場で発行され、被相続人がどの不動産を所有していたかを調査する際に利用されます。相続手続きの初期段階で不動産の漏れを防ぐために重要な資料です。


25. 固定資産税評価証明書

意味:不動産の固定資産税評価額を記載した証明書。

解説:不動産の相続税評価額や登録免許税の計算に必要な書類です。市区町村の固定資産税課で取得できます。


26. 限定承認

意味:相続した財産の範囲内でのみ、被相続人の負債を負担する制度。

解説:相続財産より負債が多い可能性がある場合に選択されます。負債を財産の範囲内に限定することで、相続人のリスクを軽減できますが、家庭裁判所での手続きが必要で、相続人全員の同意が求められます。


27. 遺贈

意味:遺言書に基づき、相続人以外の第三者に財産を譲ること。

解説:遺言書に明記することで、特定の個人や団体(例えば、友人や慈善団体)に財産を遺すことが可能です。ただし、遺留分に配慮する必要があります。


28. 成年後見制度

意味:判断能力が低下した人を支援するため、家庭裁判所が後見人を選任する制度。

解説:認知症や知的障害などにより財産管理や契約行為が困難な人を保護する仕組みです。法定後見制度と呼ばれることもあります。


29. 任意後見制度

意味:将来判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ信頼できる人を後見人として選任しておく制度。

解説:任意後見契約を公正証書で結ぶことで有効になります。財産管理や生活支援を依頼する内容を自由に設定できるため、柔軟な対応が可能です。


30. 家族信託

意味:家族に財産を託し、信託契約に基づいてその管理や運用を任せる制度。

解説:高齢者の財産管理や相続対策に活用されることが増えています。家族信託を利用することで、財産管理や遺産分配を契約に基づき柔軟に行えますが、専門的な知識が必要なため、専門家に相談するのが一般的です。


まとめ

相続手続きでは、多くの専門用語が登場しますが、意味を理解することでスムーズに手続きを進めることができます。分からない用語がある場合は、専門家に相談して、正確な情報を把握するようにしましょう。