
相続手続きを進める上で、被相続人が遺言書を残しているかどうかわからない場合があります。
遺言書があるかないかで相続の進め方が大きく変わるため、まずは遺言書の有無をしっかり確認することが重要です。
この記事では、遺言書があるかわからない場合の具体的な確認方法と注意点について解説します。
遺言書が見つからない場合に確認すべきポイント

遺言書が見つからない場合、どうすればよいでしょうか?

遺言書の有無を確認するためには、被相続人の遺品や関係する場所を丁寧に調べることが第一歩です。
また、公証役場の検索制度を活用するのも有効でしょう。
遺言書があるか確認する方法
- 自宅や金庫の確認
遺言書は、被相続人が自宅や自分の金庫に保管している場合が多いです。
特に、書類棚や金庫、重要な書類がまとめられている場所を重点的に確認しましょう。 - 金融機関や弁護士事務所への問い合わせ
被相続人が信頼していた金融機関や弁護士、司法書士に預けているケースもあります。
心当たりがある場合は、問い合わせてみるとよいでしょう。 - 公正証書遺言の確認
公正証書遺言の場合、作成時に公証役場で保管されるため、公証役場で「遺言書の有無」を確認 できます。
ただし、確認できるのは公正証書遺言に限られます。 - 法務局の遺言書保管制度を利用
最近では、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」が普及しています。
遺言書が法務局に保管されている可能性がある場合は、法務局で確認の申請を行いましょう。
公正証書遺言の検索システム
調べることのできる遺言書
全国の公証役場で、昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言について、遺言書の有無と保管されている公証役場を調べることができます。
遺言書の内容については、遺言書が保管されている公証役場に対して、原本の閲覧や正謄本の請求をすることで確認をすることができます。
また、遠方の公証役場の場合でも、郵送の方法により正謄本の請求をすることが可能です。
検索システムを利用できる人
遺言をした人の生前は、遺言者のみが検索システムを利用することができます。
遺言者が亡くなった後は、相続人や受遺者、遺言執行者などの利害関係人が利用可能です。
また、利害関係人からの委任状により、代理人からの利用請求も可能になっております。
検索システム利用の際の必要書類
公正証書遺言の検索システムを利用する場合には、以下の書類が必要となります。
事前に公証役場に問い合わせをしておくことで、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。
遺言者本人が利用する場合
- 遺言者本人の本人確認資料(運転免許証など)
相続人等が利用する場合
- 相続人本人の本人確認資料(運転免許証など)
- 遺言者が亡くなったことのわかる書類(戸籍など)
- 相続関係のあることがわかる書類(戸籍など)
自筆証書遺言の検索システム
調べることのできる遺言書
法務局の自筆証書遺言保管制度を活用していた場合、保管されている遺言書を調べることができます。
なお、保管制度は令和2年7月10日より開始されており、それ以降に書かれた遺言書がある場合は、保管されている可能性が高まると考えられます。
全国どこの遺言書保管所(遺言書の保管に対応した法務局)からも保管の確認ができ、郵送での請求も可能です。
検索システムを利用できる人
相続人や受遺者、遺言執行者などの利害関係人が検索システムを利用できます。
なお、利害関係人による請求は、遺言者が亡くなってからではないと利用できない点、注意が必要です。
検索システム利用の際の必要書類
検索システムを利用する際は、以下の書類が必要となります。遺言者との関係性により必要書類が異なる場合がありますので、事前に法務局に問い合わせておくとスムーズな利用ができるでしょう。
- 請求者本人の本人確認資料(運転免許証など)
- 請求者本人の住民票
- 遺言者が亡くなったことのわかる書類(戸籍など)
- 相続関係のあることがわかる書類(戸籍など)
具体的な請求の流れにつきましては、法務局のホームページを確認すると良いでしょう。
遺言書が見つからない場合
相続人全員で協議を行う
遺言書が見つからない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配方法を決定します。相続人全員の同意が得られていない場合、遺産分割は無効になりますので注意が必要です。
亡くなった方の口頭での意思表示があった場合
亡くなった方が生前に口頭で意思表示をしていた場合でも、それを遺言として法的に扱うことはできません。遺産分割協議で参考にすることは可能ですが、法的拘束力はありません。
遺言書が発見された場合の対応
家庭裁判所での検認
自筆証書遺言が発見された場合、家庭裁判所での検認手続きが必要です。ただし、公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言については検認が不要です。
検認手続きの完了までには、申し立てから1~2か月程度の時間がかかりますので、自筆証書遺言を発見した場合には早めの手続きを心がけましょう。
遺言内容に基づく手続き
遺言書の内容を確認した上で、相続財産の分配や名義変更などの手続きを進めます。公正証書遺言の場合、実務的には「謄本」での手続きが認められているケースが多いです。
また、検認を要する自筆証書遺言の場合は、「検認済み証明書」を手続きに使用します。
まとめ
遺言書があるかどうかわからない場合は、まずは遺品や公証役場、法務局を確認することが重要です。
遺言書の有無で相続の進め方が大きく変わるため、早めに確認し、適切な手続きを進めましょう。
不安な点がある場合は、専門家に相談することでスムーズな相続が可能になります。
遺言書や相続手続きに関するご相談は、むとう事務所までお気軽にお問い合わせください。