相続放棄とは、相続人が遺産の承継を一切放棄する手続きのことです。相続放棄を行うと、被相続人の財産や債務を引き継がず、最初から相続人でなかったものとみなされます。この記事では、相続放棄の流れや注意点について詳しく解説します。


相続放棄とは?

相談者様

相続放棄って、どういう場合に行うんですか?

むとう事務所

被相続人に借金などの負債が多い場合や、遺産を承継したくない場合に利用されることが多いです。ただし、手続きには期限や必要書類があるので注意が必要です。

相続放棄をすることで、被相続人の借金を含む全ての権利義務を放棄することができます。ただし、遺産の一部のみを放棄することはできません。


相続放棄の基本的な流れ

相続放棄は、家庭裁判所に申述して手続きを進めます。以下に、具体的な流れを示します。

1. 相続財産の調査

相続財産を調査し、プラスの財産とマイナスの財産を分けて確認します。相続放棄は一度行うと原則撤回はできないため、後に財産が判明して損をしてしまったということがないように、しっかり調査をすることが大切です。

2. 必要書類の準備

家庭裁判所に提出するための書類を準備します。主な必要書類は以下の通りです

  • 相続放棄申述書(裁判所で入手可能)
  • 被相続人の死亡を証明する戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 被相続人と相続人の関係を証明する戸籍謄本
  • その他、裁判所が求める書類

3. 家庭裁判所への申し立て

相続放棄の申し立てを行う家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

4. 裁判所による確認

家庭裁判所が申述内容を確認し、10日前後で相続放棄に関する照会書が送付されます。照会書には回答を記入する欄がありますので、必要事項を記入して家庭裁判所に再送します。

5. 相続放棄申述受理通知書の受領

照会書を再送してから10日前後で、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。この通知書をもって、相続放棄が正式に完了します。以後、相続人としての権利義務は一切なくなります。


注意点と期限

相続放棄を行う際には、以下の注意点を押さえておきましょう。

1. 期限は3か月以内

相続放棄の申述は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に行う必要があります。この期間を「熟慮期間」といいます。

2. 一部放棄は不可

遺産の一部を承継し、一部を放棄することはできません。相続放棄をすると、全ての遺産が対象となります。

3. 放棄後の順位

相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。放棄者は初めから相続人ではなかったとみなされます。

相談者様

「3か月を過ぎてしまった場合は絶対に相続放棄はできないんですか?」

むとう事務所

「原則として3か月を過ぎると相続放棄はできません。ただし、裁判所が特別の事情を認めた場合、放棄が認められることもあります。例えば、相続人がマイナスの財産の存在を全く知らなかった場合や、その事実が後から判明した場合などが該当します。具体的な状況に応じて判断が変わるため、専門家にご相談いただくと安心です。」

相続財産の調査の重要性

相続財産を調査し、プラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)とマイナスの財産(借金、未払金、保証債務など)を分けて確認することは、相続放棄を検討する上で非常に重要です。

相談者様

「相続放棄を決める前に、何を調査すればいいんでしょうか?」

むとう事務所

「まず、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産をリストアップします。例えば、銀行口座や不動産の確認だけでなく、ローンや保証債務も忘れずにチェックすることが大切です。」

なぜ相続財産の調査が必要なのか?

相続放棄は一度行うと、原則として撤回ができません。そのため、相続手続き後に「実は多額の資産があった」と判明した場合でも、相続放棄を撤回して財産を受け取ることはできません。
このようなトラブルを防ぐため、相続財産を可能な限り正確に把握しておくことが重要です。

調査で確認すべきポイント

  1. 金融資産:銀行や証券会社の口座、貸金庫などを確認。
  2. 不動産:固定資産税の納税通知書や名寄帳を取り寄せ、所有不動産を把握。
  3. 負債:借入金、カードローン、税金の未納、保証債務などを調査。
  4. その他:生命保険や退職金、未払い給与などの権利も確認。

プラスの財産が明らかに少ない場合や、借金などのマイナスの財産が多い場合は、相続放棄を検討するのが賢明です。


まとめ

相続放棄は、被相続人の負債を承継せずに済む有効な手段ですが、期限や手続きには注意が必要です。不明点があれば、専門家に相談することでスムーズに手続きを進められます。お困りの方はお気軽にご相談ください。