
父が亡くなったのですが、財産も借金もあるようで、どうしたらいいか悩んでいます…。全部相続するのも不安ですし、放棄すると財産も一切もらえなくなりますよね?

そうですね。財産と借金の両方がある場合、『限定承認』という制度があります。今回は、この限定承認について分かりやすくご説明します。
1. 限定承認とは?
限定承認とは、相続によって受け継ぐ財産の範囲内で、被相続人(亡くなった方)の負債や債務を返済する制度です。
簡単にいうと、「財産以上に借金を背負うことはない」という制度です。
2. 限定承認のメリット
■ 借金を財産の範囲内で返せばよい
例えば、財産が500万円で借金が1,000万円あった場合、500万円分だけ返済して、残りの500万円は支払う必要がありません。
■ 財産以上にマイナスになる心配がない
負債の額がはっきり分からないときや、後から借金が見つかる可能性がある場合も安心です。
3. 限定承認のデメリット
ただし、手続きが複雑で手間や費用がかかるため、注意も必要です。
■ 相続人全員で行う必要がある
限定承認は、相続人全員が共同で行う必要があります。一人でも反対する人がいるとできません。
■ 期限は3か月以内
相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申立てをしなければなりません。
■ 官報公告や換価手続きが必要
家庭裁判所で手続き後、債権者に対して「借金を請求したい人は申し出てください」と官報に公告を行います。 さらに、不動産などの遺産は原則として金銭に換える手続きをしなければなりません。
■ 競売で売却するケースもある
基本的には不動産などは競売手続きとなります。通常の売買より手間がかかり、安く売却されるケースもあります。
4. 限定承認を使ったほうがよい場合

デメリットも多いんですね…。

そうですね。ただ、次のようなケースでは限定承認が役立つ場合があります。
■ 自宅を残したい場合
借金はあるけれど、「自宅は残したい」という場合があります。
限定承認には『先買権』という制度があり、競売で優先的に自宅を購入することが可能です。例えば、相続人自身がその不動産を買い取ることで、自宅を手放さずに済むケースがあります。
5. 基本的には「単純承認」か「相続放棄」が多い
実際には、限定承認は手続きが煩雑なため、利用されることはあまり多くありません。
- プラスの財産が明らかに多い場合 → 単純承認(すべて相続)
- 借金が明らかに多い場合 → 相続放棄
このように、財産と借金を確認して判断するケースが一般的です。

自宅を残せる可能性があるのは助かりますね。でも、手続きはやはり難しそう…。

そうですね。限定承認は手続きが複雑なので、専門家にご相談いただいたほうが安心です。当事務所でもサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。
相続についてお悩みの方は、初回相談無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。