相続預貯金の仮払い制度を説明している銀行員をイメージした画像
相談者様

相続した預貯金が凍結されていて、生活費や葬儀費用が払えなくて困っています。すぐにお金を引き出す方法はありませんか?

むとう事務所

相続預貯金の仮払い制度を利用すれば、一定の金額を引き出すことができます。ただし、条件や上限額があるので、詳しく説明しますね。

被相続人(亡くなった方)の預貯金は、相続が発生すると原則として 凍結 されます。しかし、すぐに必要なお金(葬儀費用や生活費など)がある場合、 「相続預貯金の仮払い制度」 を利用すれば、家庭裁判所の手続きをせずに 一定額まで 払い戻すことが可能です。

仮払い制度で払い戻せる金額は?

相続人が金融機関に直接請求できる金額は、次の計算式で決まります。

払い戻せる金額

計算式

(相続開始時の預貯金額 × 1/3) × 請求する相続人の法定相続分

ポイント

  • 口座ごとに払い戻し可能額の計算が必要
  • 上限金額の制限あり

仮払い制度の上限額

仮払い制度には 1金融機関あたり150万円 という上限が設定されています。

相続人が配偶者と子供一人のみで、配偶者が仮払金を請求する場合

【相続財産:A銀行1,200万、B銀行1,200万のとき】

払い戻し可能額

A銀行:最大150万円
B銀行:最大150万円

※計算式:1200万円×1/3×1/2(配偶者の法定相続分)=200万円
200万円は上限の150万円を超えるため、各銀行で150万円まで払い戻し可能。

【相続財産:C銀行600万のとき】

払い戻し可能額

C銀行:最大100万円

※計算式:600万円×1/3×1/2(配偶者の法定相続分)=100万円
仮払い可能な額の計算で 上限が150万円 を超えないため、実際に払戻せるのは 100万円 までとなる。

仮払い制度の利用方法

仮払いを希望する相続人は、金融機関に以下の書類を提出します。

【必要書類】

  • 被相続人の 死亡が確認できる戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 払い戻しを求める預貯金の明細
  • 本人確認書類(運転免許証など)

相続人の全員の同意は不要 ですが、後でトラブルにならないように他の相続人とも相談しておくのが望ましいです。なお、金融機関により必要な書類が異なる場合がありますので、事前に対象の金融機関に確認をすることでスムーズに手続きを進めることができます。

仮払い制度を利用する際の注意点

【他の相続人とのトラブルを避ける】

  • 相続財産の分け方が決まる前に一部の相続人が仮払いを受けると、後々「勝手に引き出した」とトラブルになる可能性があります。
  • 仮払いを利用する前に、できる限り 他の相続人と話し合っておくこと をおすすめします。

【遺産分割の際に精算が必要】

  • 仮払いを受けた分は、最終的な遺産分割協議の際に考慮されるため、 この制度を使うことで多く遺産が受けられるというわけではありません。

【金融機関によって対応が異なる】

  • 一部の銀行では 独自の書類や手続き が必要な場合があります。
  • 事前に金融機関に確認しておくとスムーズに手続きが進みます。

まとめ

相続預貯金の仮払い制度とは?
 → 被相続人の預貯金を 一定額まで 相続人が仮払い請求できる制度。

払い戻しの計算方法
 → (預貯金額 × 1/3) × 相続人の法定相続分(口座ごとに計算)

上限額
 → 1金融機関あたり最大150万円 まで

手続きのポイント
 → 金融機関に必要書類等を事前確認してからはじめるとスムーズ

注意点
 → 他の相続人と事前に相談し、トラブルを避ける

相続の手続きでお困りの場合は、司法書士法人むとう事務所までお気軽にご相談ください。