

遺言で他の人に財産を全部譲ると書かれていました。私は何ももらえないのでしょうか?

相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められています。遺留分を侵害された場合は、「遺留分侵害額請求」をすることで金銭の請求が可能です。計算方法も詳しく説明しますね。
遺留分とは?
遺留分 とは、一定の相続人(配偶者、子、直系尊属)に認められた 最低限の相続分 のことです。
遺言によって他の相続人や第三者に財産を多く渡した場合でも、 遺留分を侵害することはできません。
遺留分を請求できるのは、次の 「遺留分権利者」 です。
【遺留分が認められる相続人】
- 配偶者
- 子(代襲相続人を含む)
- 直系尊属(父母や祖父母)
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分侵害額の計算方法
遺留分侵害額の計算は、次の 3つのステップ で行います。
① 遺留分を計算する
まず、遺留分の対象となる財産を計算します。
遺留分算定の基礎財産
次の計算式で、遺留分の基礎となる財産額を求めます。
(相続財産の額+相続人への生前贈与(10年以内)+第三者への生前贈与(1年以内)-相続債務の額)
※生前贈与も遺留分の計算に含まれる ため注意が必要です。
【ポイント】
- 相続人への贈与は10年間さかのぼって計算
- 第三者への贈与は1年間のみ計算対象
- 借金などの相続債務は控除する
② 遺留分の割合を計算する
遺留分の割合は、以下のとおり法律で定められています。
相続人の構成 | 遺留分割合 |
---|---|
配偶者・子 | 1/2 |
直系尊属のみ(父母・祖父母) | 1/3 |
さらに、上記の遺留分割合に 遺留分権利者の法定相続分 を掛け算します。
(基礎財産 × 遺留分割合) × 遺留分権利者の法定相続分
③ 遺留分侵害額を求める
遺留分を主張する相続人が、 生前贈与や遺贈で受け取った財産がある場合、それを控除 します。
遺留分額 - (自身が受け取った生前贈与 + 遺贈)+ 承継債務の額
受け取った財産がすでに遺留分以上ある場合、侵害請求はできません。
なお、この時の生前贈与の金額には、基礎財産の計算と際と異なり、10年以上前に受けたものも含まれますので注意が必要です。
遺留分計算の具体例
配偶者からの遺留分請求が可能なケース
【前提条件】
- 被相続人の遺産:5,000万円
- 相続人:配偶者と長男・次男
- 相続債務:1,000万円
- 長男へ5年前に 1,000万円の生前贈与
- 遺言で次男に 4,000万円を遺贈
- 配偶者には遺産なし
ステップ①(基礎財産の計算)
(5,000万円 + 1,000万円 - 1,000万円)= 5,000万円
ステップ②(遺留分の計算)
- 配偶者・子が相続人 → 遺留分割合 1/2
- 配偶者と子2人の法定相続分は 配偶者は2/4、子2人は各1/4 ずつ
- 配偶者:5,000万円 × 1/2 × 2/4 = 1250万円
- 長男:5,000万円 × 1/2 × 1/4-1000万円 = 0円
- 次男:5,000万円 × 1/2 × 1/4 -4000万円= 0円
ステップ③(遺留分侵害額の計算)
- 配偶者は何ももらっていないので、1250万円を請求可能
- 長男はすでに1,000万円の生前贈与を受けているため、侵害なし
- 次男は遺贈4,000万円を受け取っているため、侵害なし
結果: 配偶者のみ 1250万円の遺留分侵害額請求が可能。
遺留分侵害額請求の方法
遺留分を侵害された相続人は、 遺留分侵害額請求 をすることで、侵害された分の金銭を請求できます。
【請求期限】
→ 相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内(最長で10年以内)
※ 1年を過ぎると時効で請求できなくなる ため注意!
【請求方法】
- 相手に内容証明郵便で請求する
- 交渉で解決しない場合は、家庭裁判所で調停を申し立てる
- 調停が不成立の場合、裁判で請求する
遺留分侵害額請求をする際の注意点
【金銭での請求となる】
- 2019年の民法改正により、遺留分侵害額請求は 「金銭の請求」 に限定された。
- 以前のように、特定の不動産や株式を分割することはできない。
【請求期限に注意】
- 1年以内に請求しないと時効となるため、早めに行動する。
【相続トラブルを避けるための対策】
- 遺言を書く際に 「遺留分対策」 を考えることが重要。
- 例えば、事前に話し合ったり、不公平感をなくしておけると良い。
まとめ
- 遺留分は最低限の取り分として認められる
- 遺留分侵害額は「基礎財産×遺留分割合×法定相続分」で計算
- 生前贈与や遺贈を考慮して、遺留分侵害額を算定
- 請求期限は1年以内なので早めに対応する
相続や遺留分でお悩みの方は、司法書士法人むとう事務所までお気軽にご相談ください!