租税弁護士が教える事業承継の法務と税務

事業承継は、法律・税務・経営、そして家族間の感情が複雑に絡み合う分野です。本書を通して、実務で判断が分かれやすいポイントや、制度の背景にある考え方を整理することができました。

今回、特に印象に残った内容を備忘録としてまとめます。


■ 株式の集中と議決権の確保

後継者が安定して経営できる体制づくりには、3分の2以上の議決権確保が一つの目安となります。重要事項の決議が円滑にできるため、株主構成の設計は初期段階で検討すべき論点です。

また、将来の株式分散を防ぐ手段として、定款に「相続人への売渡請求規定」を設けておく方法が有効とされています。


■ 生前贈与と遺留分の持戻し

遺留分侵害となるかどうかは、贈与の時期・性質・当事者の認識により異なります。

  • 相続開始前10年以内:婚姻・生計のための贈与が対象
  • 相続開始前1年以内:原則すべて対象
  • 双方が遺留分侵害を認識していた場合:1年以上前でも対象

生前贈与を活用した承継計画では、この点が大きな判断材料となります。


■ M&A手法と実務で選ばれる方法

M&Aには様々な手法がありますが、実務上多いのは株式譲渡方式です。

株式譲渡が選ばれる理由:

  • オーナーチェンジが容易
  • 契約関係・許認可・雇用契約などが維持される
  • 承継手続が比較的シンプル

合併は簿外債務や偶発債務の承継リスクが高く、新設合併は許認可の問題があり、実務では選択肢が限られる印象です。


■ 株式売買価格と退職金の位置づけ

親族間の株式売買では、価格設定が任意であること自体が後々争点になるケースがあります。
適正評価や第三者意見の活用が重要です。

一方、退職金は税務優遇が大きく、承継設計の選択肢として有効です。

  • 退職所得控除後、課税対象はさらに1/2
  • 妥当な金額であれば損金算入可能

経営者個人・法人双方にとって意味のある設計となります。


■ 株式評価方法と財産評価基本通達

株式評価は、引き渡し相手によって手法が異なります。

相手評価方法
親族間・相続財産評価基本通達
M&A(第三者)ケースに応じて別方式

通達方式は企業規模に応じて異なり、

  • 子会社 → 純資産価額方式
  • 中規模企業 → 複数方式の併用

となります。


■ 事業承継税制の特徴と注意点

事業承継税制は、株式承継時の相続税・贈与税を猶予し、条件を満たせば最終的に免除される制度です。
ただし、要件を逸脱した場合には猶予取り消しとなり、利子税も含め納税義務が生じます。

特に、株価が1億円を超える規模感から検討されることが多い制度という印象です。


■ その他論点と承継方法

  • 相続人への売渡請求制度
  • 譲渡制限株式の遺贈には会社承認が必要
  • 持株会社方式(オーナー型・後継者型)の比較検討

企業の状況・後継者の立場・財務体質により、最適な承継方法は異なります。


✍️まとめ

事業承継は「制度を知る」だけでは不十分で、
会社の現状・家族関係・経営の将来像を踏まえた設計が必要だと感じました。

引き続き学びを深め、実務に活かしていきたいと思います。


以上、「読書メモ|士業の学び」でした。

また次の一冊も記録していきます。