相談者様

家族信託や後見制度、遺言って、どう違うんですか?

むとう事務所

それぞれ役割や強みが違います。今回は比較しながら整理してみましょう。

家族信託や後見、遺言の対象となる財産(不動産)をイメージした画像

制度ごとの基本的な役割

まずは、それぞれの制度の目的を簡単に整理します。

制度主な目的特徴
家族信託財産管理・財産承継裁判所の監督がなく、柔軟に設計できる
後見制度身上保護・財産管理裁判所の関与が強く、厳格な管理
遺言財産承継死亡時に効力が発生し、一括承継

家族信託は、財産管理の面では後見制度と、財産承継の面では遺言と重なる部分を持つ制度です。

そのため、後見制度を利用せずに財産管理を行いたい場合や、遺言では実現できない生前からの財産承継を希望する場合等に、家族信託が有効な選択肢となります。

各制度の比較

家族信託と後見制度の比較

成年後見制度は、本人の利益を守ることを最優先にした仕組みです。

そのため柔軟性には欠け、居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要です。
財産は本人以外のために使えず、後見人への報酬も一生涯発生します(年36~60万円程度)。

これに対し、家族信託では受託者が賃貸契約や修繕、賃料管理など幅広い管理を行うことができ、大規模修繕や投資的な運用も可能です。

裁判所の監督を受けない分、柔軟な財産管理が可能ですが、認知症になると設定ができないため早めの準備が必要です。

比較項目家族信託成年後見
財産の使い方柔軟に設計可能(投資や修繕もOK)本人のためにしか使えない
裁判所の関与なし常に報告が必要
継続費用監督人を置かない場合は不要年36~60万円程度
設定のタイミング元気なうちに必要判断能力が低下してから利用可能

家族信託と遺言の比較

遺言は、本人の死亡時に効力が発生し、財産を一括して承継させる制度です。
シンプルで確実ですが、次の世代への承継を指定することはできません。

これに対し、家族信託では承継のタイミングを柔軟に設定できます。
たとえば「父の生前 → 父の死後 → さらに次の世代」といった複数段階での承継も可能です。

承継のタイミングは、①委託者の生前、②委託者の死亡時、③委託者の死亡後から選択することができ、特に③の場合は、上記の「跡継ぎ型遺贈」と類似の効果を持たせることができます。

さらに、遺言では一括承継しかできませんが、家族信託では一括承継に加えて、第二受益者に分けて給付することもできます。
これは遺言にはない大きなメリットです。ただし、将来受け取る年金など、信託に組み込めない財産については遺言を併用する必要があります。

任意後見との比較

任意後見では、自分が信頼できる人を後見人に選べるという安心感があります。
しかし、裁判所が選任する監督人がつくため、希望どおりに柔軟な運用ができないことがあり、さらに監督人への報酬(年18~30万円程度)が発生します。

一方、家族信託は裁判所の管理を受けないため、より自由度の高い財産管理が可能です。
必要に応じて「受託者管理人(受託者をチェックする役割)」を置くこともできますし、置かずに家族だけで完結させることもできます。

各制度を組み合わせた活用

1つの制度で全てをカバーするのは難しいため、各制度を組み合わせて活用が実務上有効です。

  • 家族信託+遺言:信託できない財産(年金など)や将来取得する財産を遺言でカバー
  • 家族信託+任意後見:生活費や日常的なお金の管理も任せられる
  • 家族信託+法定後見:取消権を利用して悪質商法への対策も可能

まとめ

家族信託は、後見や遺言にはない柔軟な財産管理と承継の仕組みを実現できます。

ただし、元気なうちに準備しなければ使えない点には注意が必要です。
一方、後見制度や遺言にもそれぞれ強みがあるため、制度を組み合わせて利用することが、安心できる将来設計につながります

家族信託や相続、終活に関してお困りの方は、司法書士法人むとう事務所までご相談くださいませ。